友達は少なくていい、のではなく「少ないほうがいい」。霊長類学が教える、心と体が整いやすい集団サイズ [note059]

Ref. #ダンバー数 #社会脳仮説 #グルーミング #共感サークル

Library Note [Note-059]

本日の問い

なぜ、つながればつながるほど、私たちは孤独を感じるのか?

こんな方へ

  • SNSの通知や人間関係のメンテナンスに、正直「疲れ」を感じている方。
  • 「いいね」の数やフォロワー数に、無意識に自分の価値を委ねてしまっている方。

この記事の結論

  • 人間の脳のサイズから計算すると、群れとして認識できる限界数は「約150人(ダンバー数)」である。
  • さらに、身体的に信頼し合える深い関係は、もっと少ない「15人」程度に限られる。
  • 限界を超えたつながりは、脳にとっての「ノイズ」になる。定員を守ることが、心の平穏を取り戻す鍵である。

スマートフォンを開けば、数百人、数千人の「友達」や「フォロワー」とつながることができます。 人類史上、これほど多くの他者と接点を持った時代はありません。

しかし、不思議なことに、つながればつながるほど、私たちは得体の知れない孤独を感じています。 なぜでしょうか?

その答えは、私たちの「脳の容量(ハードウェア)」が決まっているからです。 今日は、イギリスの進化生物学者ロビン・ダンバーが提唱した「数」の話から、人間関係の適正サイズについて考えてみましょう。

1. 脳が決めた定員「150人」

霊長類学には「社会脳仮説」という考え方があります。 群れのサイズは、その動物の脳(特に大脳新皮質)の大きさ比例するという法則です。

この法則を人間に適用して導き出された数字が「150」です。 これを「ダンバー数」と呼びます。

  • 150人: 名前と顔が一致し、関係性を把握できる限界値。
  • 50人: 信頼関係のあるグループ。
  • 15人: 困ったときに助け合ったり共感しあえる規模。
  • 5人: 家族や親友などの「コア・グループ」。

歴史を見ても、狩猟採集民の集落、ローマ軍の中隊、現代の年賀状の平均送付枚数に至るまで、人間が自然に形成する組織は常にこの「150」前後に収束します。

これは努力で超えられる壁ではありません。 胃袋に入らない量の食事を詰め込めないのと同様、脳の処理能力として物理的に不可能なラインなのです。絡先を何千件登録しようとも、生身の人間として認知し、ケアできるのは、せいぜい村ひとつ分の人数が限界なのです。

2. 「言葉」は「毛づくろい」の代用品

そもそも、霊長類はなぜ群れのサイズを制限するのでしょうか。 それは、関係維持のためのコストがかかるからです。

サルたちは、お互いの毛づくろい(グルーミング)をすることで同盟関係を確認します。 しかし、1日は24時間しかありません。 食事や睡眠の時間を除けば、グルーミングに割ける時間は限られます。

人間にとってのグルーミングは「会話」や「接触」です。 SNSの「いいね」や短いコメントは、効率化されたデジタルな毛づくろいですが、それでも認知リソースは消費します。

数千人のフォロワー全員に対して、脳内で社会的なタグ付けを行い、関係性を維持しようとすればどうなるか。 処理落ちを起こし、最も重要な「コア・グループ(5人〜15人)」へのケアがおろそかになります。

広く浅い接続の代償として、深く狭い安全基地が崩壊する。これが、SNS時代に蔓延する「つながりの中の孤独」のメカニズムです。

3. 「共感」できる人数はもっと少ない

京都大学の山極壽一先生(霊長類学者)は、さらに興味深い指摘をしています。 言葉を介さず、身体的な感覚や阿吽(あうん)の呼吸で共鳴できる集団のサイズは、150人よりもっと小さいと言います。

  • 共感サークル(10〜15人): サッカーやラグビーのチーム人数。お互いの動きが直感的に予測できる範囲。
  • 親密なサークル(3〜5人): 家族や親友。何かあった時に、自分の身を削ってでも助けたいと思える範囲。

私たちが「身体的」に安心できるのは、実はスポーツチームひとつ分くらいの人数が限界なのです。

SNSはこの生物学的な壁を越えて、何千人もの「友達」を私たちに突きつけます。 脳の処理能力を超えた数の他者が流れ込んでくること。 それが、現代特有の「脳のオーバーヒート(人間関係疲れ)」の原因ではないでしょうか。

まとめ:小さな群れを大切にする

友達が少ないことは、能力が低いことでも、寂しいことでもありません。 それは、あなたの脳が「誠実に扱える範囲」を守ろうとしている、正常な反応です。

広大なネットの海で、顔の見えない誰かの言葉に傷つく必要はありません。 あなたの身体が届く範囲、声が直接届く範囲にいる「15人のチームメイト」や「5人の家族」。

その小さなサークルの中で、言葉以上のものを交わし合い、しっかりと身体的な根を張ること。 それが、未完成な私たちがこの世界で安心して生きていくための、最も確実な生存戦略なのです。

この記事を書いた人

トレーナーAzuma

フィットネスの知見をもとに、動きやすい体づくりをサポート。「日常を軽やかに動く体作り」を目指して情報発信中。

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