「食べていないのに痩せない」という矛盾。物理法則と「代謝適応」の正体。 [note058]

Ref. #エネルギー保存の法則 #代謝適応 #基礎代謝 #栄養飢餓

Library Note [Note-058]

本日の問い

「食べないのに痩せない」。その原因は努力不足ではありません。あなたの身体で起きている、物理学的な矛盾について解説します。

こんな方へ

  • カロリー計算を徹底し、極端な食事制限をしているのに痩せない方。
  • 常に手足が冷たく、日中の倦怠感が抜けない方。
  • 「これ以上何を減らせばいいのか分からない」と追い詰められている方。

この記事の結論

  • 過度な制限を行うと、身体は命を守るために代謝(生命維持機能)の出力を落とす「代謝適応」を発動させる。
  • 必死に運動するよりも、「栄養を入れて代謝を戻す」ほうが、結果として消費されるカロリーは大きくなる場合がある。

「食事はサラダだけ。」 「カロリーは1日1000kcal以下。」

これだけ制限しているのだから、痩せないはずがない。 そう思って体重計に乗っても、数字が変わっていない。あるいは、むしろ少し増えていることさえある。

この絶望的な状況に直面した時、多くの人は「私の努力がまだ足りないんだ」と自分を追い込み、さらに食事を減らそうとします。

しかし、ここでさらに減らすことは、逆効果にしかなりません。

物理法則と身体のメカニズムを知れば、今あなたの身体の中で起きている「矛盾」の正体が見えてきます。

物理法則からは逃げられない

まず大前提として、この宇宙には絶対的なルールがあります。 「エネルギー保存の法則(熱力学第一法則)」です。

ダイエットにおいて、これは以下の式で表されます。

  • 摂取エネルギー < 消費エネルギー = 体重減少
  • 摂取エネルギー > 消費エネルギー = 体重増加

この法則に例外はありません。 「空気を吸うだけで太る」ということは、物理的にあり得ないのです。

では、なぜ「食べていないのに痩せない」という現象が起きるのでしょうか? 多くの人は、この式の「消費エネルギー」を、「運動」のことだけだと思い込んでいます。

しかし、消費エネルギーの構成要素を見てみると、ランニングなどの運動が占める割合はせいぜい20〜30%。 残りの60〜70%という圧倒的なウェイトを占めているのは、「基礎代謝」です。

基礎代謝とは、寝ていても心臓を動かし、体温を保ち、細胞を入れ替えるためのエネルギーのこと。 この「代謝」という数値は、ブラックボックスのように扱われがちですが、決して固定された数字ではありません。

私たちの身体は、入ってくるエネルギー量に合わせて、この基礎代謝のレベル(出力)を劇的に変化させる機能を持っています。

身体の防衛反応「代謝適応」

私たちの身体にとって、最も避けなければならない事態は「餓死」です。 そのため、入ってくるエネルギー(食事)が極端に減ると、身体は即座に「省エネモード」へと切り替わります。

この機能を、専門用語で「代謝適応」と呼びます。

具体的には、脳が「飢餓の危険がある」と判断した瞬間、甲状腺ホルモンの分泌を減らし、自律神経の働きを調整して、以下の節約を行います。

  • 体温を下げる: 熱として逃げるエネルギーを最小限にする。
  • 心拍数を落とす: 血液循環のペースを落とす。
  • 不要な機能を止める: 生殖機能(月経)や、髪・肌の再生をストップする。

こうして、身体は全力で「基礎代謝」を下げに行きます。 その下げ幅は強力で、時には通常の30〜40%ものエネルギーをカットしてしまいます。

結果として、「摂取カロリー」を減らした分だけ、「消費カロリー」も減ってしまい、エネルギー収支がプラスマイナスゼロになってしまうのです。

これが、食べていないのに痩せない(停滞期)の正体です。

「カロリー」だけでなく「栄養」の飢餓

さらに深刻なのが、「栄養飢餓」という概念です。

私たちは「飢餓」と聞くと、単にカロリーが足りない状態を想像します。 しかし身体にとっては、代謝を回すための「ビタミン」「ミネラル」「タンパク質」といった材料が入ってこないことも、立派な飢餓状態です。

たとえある程度のカロリーを摂っていたとしても、カップ麺やお菓子ばかりで栄養が空っぽなら、身体は代謝のスイッチを切ります。 逆に、しっかりカロリーを摂っていても、十分な栄養が満たされていれば、身体は「安全だ」と判断して代謝(燃焼)を活発にします。

「食べていないのに痩せない」 この時、あなたの身体では、カロリー不足による「省エネ運転」と、栄養不足による「身体の機能不全」が同時に起きているのです。

「食べる」ことは、走ることより熱を生む

多くのダイエッターは、食べた分を消費しようと、必死に運動をします。 しかし、ここで冷静な数字の比較をしてみましょう。

例えば、ジムで30分間、息を切らしてジョギングをして消費できるのは、およそ200〜250kcal程度です。

一方で、無理な食事制限によって「代謝適応」が起き、基礎代謝が低下した場合どうなるか。 本来1200kcal燃やしてくれるはずの基礎代謝が、防衛反応によって900kcal程度まで落ち込むことは珍しくありません。 つまり、何もしなくても毎日300kcal分の消費能力を捨てていることになります。

  • 代謝が落ちた身体で走る: 苦しい運動をして、ようやくマイナス200kcal。
  • 栄養を摂って代謝を戻す: 食べるだけで、基礎代謝が300kcal回復する。

栄養のある食事を摂り、内臓を動かし、体温を上げる(DIT:食事誘発性熱産生)。 これにより回復する消費エネルギーは、あなたが必死に行う30分のジョギングを、いとも簡単に上回るのです。

「食べたら太る」という恐怖心から抜け出し、「食べるからこそ燃える」という人体の事実に目を向けてください。

結論:減らすべきは「カロリー」ではなく「飢餓感」

「食べていないのに痩せない」という現象は、魔法ではありません。 あなたの身体が正常に防衛本能を働かせている証拠です。

この状態から脱出するために必要なのは、これ以上カロリーを削ることではありません。 身体に「もう緊急事態ではない」「安全だ」と伝え、閉じてしまった代謝のバルブを再び開くことです。

そのためには、一時的に勇気を持って「栄養を入れる」必要があります。

必要な栄養素をしっかりと送り込み、体温を上げ、内臓を動かす。 そうして「消費エネルギー(基礎代謝)」を高めた状態で、はじめて適切なアンダーカロリーを作る。

「高代謝・高摂取」の状態から、少しだけ引く。 これが、代謝適応という物理学的な罠を回避し、健康的に痩せるための唯一のルートです。

この記事を書いた人

トレーナーAzuma

フィットネスの知見をもとに、動きやすい体づくりをサポート。「日常を軽やかに動く体作り」を目指して情報発信中。

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