“力を入れる”より“力を抜く”方が難しいのはなぜ?赤ちゃんに学ぶ「脱力」の物理学 [note052]

Ref. #発達運動学 #防衛反応 #身体図式 #抗重力

Library Note [Note-052]

本日の問い

力を入れろ」と言われるより、「力を抜け」と言われる方が難しいのはなぜか?

こんな方へ

  • 「もっとリラックスして」と言われると、余計に身体が固まってしまう方。
  • マッサージに行っても、すぐに身体が鎧のようにバキバキに戻ってしまう方。

この記事の結論

  • 人間の身体の初期設定(デフォルト)は、赤ちゃんの時のように「脱力」した状態である。
  • 大人の「硬さ」や「力み」は、重力やストレスから身を守るために脳が後からインストールした「防御プログラム」である。
  • 脱力とは「力を抜く作業」ではない。自力を手放し、「重力(地球)に身体を預ける」という受動的な感覚である。

1. 赤ちゃんは「脱力」を学んでいない

生まれたばかりの赤ちゃんや、小さな子供を見てみてください。彼らの筋肉はマシュマロのように柔らかく、関節は驚くほど自由に動きます。

彼らは、ヨガを習ったわけでも、脱力の技術を学んだわけでもありません。 ただ、「最初からそうだった」のです。

人間にとって、余計な力が入っていない状態こそが、工場出荷時の「初期設定(デフォルト)」です。

逆に言えば、私たちが普段感じている「力み」や「硬さ」は、生まれた後にわざわざ身につけたオプション機能なのです。

2. なぜ、私たちは「硬くなる」ことを選んだのか

では、なぜ成長とともに、私たちの身体は石のように固まっていくのでしょうか。 それは、あなたが弱いからではありません。むしろ、過酷な環境に適応しようと頑張ってきた証でもあります。

  • 姿勢の維持: 重力に負けないように、筋肉を固めて骨格を支えることを覚えた。
  • 精神的な防衛: ストレスや不安から心を守るために、身体を「鎧」のように硬くした。

脳は、生きるために効率的だと判断して、筋肉に「常に硬くあれ」という命令(プログラム)を書き込みました。 つまり、身体の硬さとは、老化現象というよりも、脳が一生懸命学習した「防御システム」そのものなのです。

3. 「抜く」のではなく、地球に「任せる」

ここからが本題です。 多くの大人は、身体を柔らかくしようとして「力を抜こう、抜こう」と意識します。 しかし、「意識的に力を入れる」ことは簡単でも、「意識的に力を抜く」ことは非常に難しいのです。脳にとって、アクセルを踏むのは得意でも、ブレーキを完全に離すのは怖いからです。

では、どうすればいいのか。 答えは、自分で抜こうとするのではなく、「地球の力学」に身体を任せることです。

  • 重力に任せる: ただ「立つ」とき、重力に逆らって筋肉で身体を持ち上げようとしないでください。それは地球と戦うことです。足の裏を通して、あなたの重みをすべて「地球」に渡してしまうのです。そうすれば、地面からの反力が、勝手にあなたを支えてくれます。
  • 慣性に任せる: 動き出したら、自分でコントロールして止めようとせず、その流れ(波)に乗るように動く。

子供が柔らかいのは、自分の筋力でどうにかしようとせず、この地球の物理法則に逆らわずに身を委ねているからです。 脱力とは、能動的な行為ではありません。「自力」を手放し、大きな力に任せたときに、結果として起こる現象なのです。

まとめ:心地よさとは、地球と仲良くすること

「脱力できない」と悩む必要はありません。それは、あなたが頑張り屋で、全部を自分で支えようとしてきた結果だからです。

でも、もう少しだけ、地球を信じてみてはどうでしょうか。 手すりや壁といった文明(道具)に寄りかかるのではなく、ただ自分の足で立ち、重力という自然の摂理に自らを委ねてみる。

心地よく動けるということは、地球の力学と仲良くできているということです。

あなたが「自力」という鎧を降ろし、この星の大きな力に身を任せたとき、身体は自然と初期設定の柔らかさを思い出してくれるはずです。

この記事を書いた人

トレーナーAzuma

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