便利さとは、身体機能の「アウトソーシング」である。私たちが文明に預け、失いつつある生物としての力。 [note043]

Library Note [Note-043]

本日の問い

技術の革新で生活はどんどん便利になるその一方で、失われているものとは・・・

こんな方へ

なぜか疲れが取れない方。カラダの不調に悩まされている方。

この記事の結論

文明の進化とは、身体機能の「外部化(アウトソーシング)」の歴史である。

私たちは今、人類史上もっとも「快適」で「安全」な時代を生きています。 ボタン一つで部屋は適温になり、柔らかなソファが身体を包み込んでくれます。

これらは素晴らしい進歩です。 しかし、生物学の観点からは、この「便利さ」を少し違った角度から定義することができます。

「便利さとは、身体機能のアウトソーシング(外部化)である」

道具が優秀になればなるほど、私たちの身体は「自分でやる必要」を失い、役割を道具へと譲り渡していきます。 これは効率的ですが、生物学的な視点で見ると、ある重大なリスクをはらんでいます。

今回は、私たちが文明の利器に何を「委託」し、その結果、身体のシステムがどう変化してしまったのか。 その「喪失」について、少し深く考えてみたいと思います。

1. 身体の輪郭が、道具へと溶け出している

太古の昔、人間は裸一貫で世界と対峙していました。 暑さ寒さを肌で感じ、地面の凹凸を足裏で読み取る。 生きるとは、身体のセンサーをフル稼働させて世界と「同期」することでした。

しかし、文明の発達とともに、私たちはその機能を一つずつ外へと預け始めました。

  • 体温調節: 衣服や空調へ委託(毛皮を服へ)。
  • 記憶容量: スマホへ委託(脳の容量を外部へ)。
  • 移動手段: 車やエレベーターへ委託(足を使わない)。

私たちは今や、生身の肉体だけで生きているわけではありません。 スマホも、メガネも、靴も、いわば「拡張された身体の一部」です。

問題は、道具に機能を預けた瞬間、私たちの身体(本体)の方では、その機能のスイッチが「OFF」になってしまうことです。

2. 「Use it or Lose it」の残酷な法則

生物には、以下の残酷なまでの省エネ原則があります。

「Use it or Lose it(使わなければ、失う)」

38億年の歴史の中で、生命は常にエネルギー不足と戦ってきました。 脳は「この機能はもう道具がやってくれる」と判断すると、維持コストが勿体無いとみなし、容赦なく機能を削除(退化)します。

宇宙飛行士が無重力で骨や筋肉が急速に弱るのと同じことが、地上の便利な生活の中でも進行しています。

あなたが預けてしまった「野生」たち

具体的に、私たちは何を失いつつあるのでしょうか?

  • 足裏のセンサー機能: クッション靴への依存で、地面を読む能力が低下。
  • 股関節の柔軟性: 椅子生活への依存で、深くしゃがむ可動域が消滅。

これらはあくまで一例ですが、共通しているのは「楽をした分だけ、身体の『感度』が鈍くなっている」という事実です。

【Check】 身体の「鈍り」を確認する

理屈はさておき、自分の身体で確かめてみましょう。

  1. 足の指だけで「グー・チョキ・パー」ができますか?
  2. かかとを床につけて「深くしゃがむ」ことができますか?

もし指が動かなかったり、後ろに転びそうになったなら。 それは、本来の機能が「オフ(削除済み)」になっている証拠です。

3. 「不便」を意図的に選ぶという贅沢

文明を捨てて原始生活に戻ることは不可能です。 エアコンも靴も、素晴らしい味方です。

大切なのは、「自覚的であること」です。

  • 自覚: 「今、私は椅子に体重を預けて楽をしているな」
  • 自覚: 「スマホに記憶を預けて、脳を休ませているな」

無自覚な依存は「退化」を招きますが、自覚的な利用は「賢い付き合い方」になります。

そして、時には「意図的な不便」を生活に取り入れてください。

  • 階段を使う: 股関節と筋肉に仕事をさせる。
  • 裸足で過ごす: 足指のセンサーをONにする。
  • 空調を緩める: 自分の汗腺で体温を下げる。

これは、文明を否定することではありません。 便利な道具を使いこなしながらも、その奥にある「内なる野生」を錆びつかせないための、知的なメンテナンスです。

結論:主導権を、身体に取り戻す

便利さに埋もれず、時折、身体という「野生」のスイッチを入れ直す。

道具に使われるのではなく、道具を使いこなしながら、本体である「私」の機能も維持し続ける。 そんな絶妙なバランス感覚こそが、これからの時代に求められる本当のボディ・リテラシーです。

今日、あなたはどの機能を道具に預け、どの機能を自分で使いますか? その選択権は、常にあなたの手の中にあります。

この記事を書いた人

トレーナーAzuma

フィットネスの知見をもとに、動きやすい体づくりをサポート。「日常を軽やかに動く体作り」を目指して情報発信中。

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