最近、ニュースやSNSで「新NISA」や「iDeCo」といった言葉を目にしない日はありません。「老後2000万円問題」をきっかけに、将来のために若いうちから金融リテラシーを身につけ、コツコツと資産を形成する。これは長く生きる私たちにとって、必須の「大人の教養」となりつつあります。
しかし、人生全体を俯瞰したとき、「お金の投資と同じくらい、あるいはそれ以上に大切な投資」が存在します。
それは、「身体(からだ)」への投資です。
お金は「増える」が、身体は「減る」
人生を長いスパンで見た時、お金(金融資産)と身体(身体資産)には決定的な違いがあります。
一般的に、ビジネスパーソンとしての経験やスキルは年齢とともに積み上がり、それに伴って所得や金融資産も右肩上がりに増えていくことが期待できます。
しかし、「身体」は逆の動きをたどります。
私たちの身体は、何もしなければ20代をピークに、緩やかに、しかし確実に「減価償却」されていきます。
筋力は落ち、関節は硬くなり、無理がきかなくなっていく。放っておけば資産価値が目減りしていくのが、身体という資本の宿命です。
ここで最も恐れるべきは、「お金と時間の自由が手に入った頃には、身体が動かなくなっている」というミスマッチです。一生懸命働いて資産を築いても、それを使って旅行に行ったり、美味しい食事を楽しんだりするための「身体という資本」が底をついていては、真に豊かな人生とは言えません。
身体の借金は、恐ろしい「複利」で膨らむ
投資の世界には「複利(ふくり)」という言葉があります。利子が利子を生んで雪だるま式に増えていく仕組みですが、これは身体にもそのまま当てはまります。
プラスの複利
良い運動習慣や食事(身体への積立投資)は、複利で効いてきます。毎日の小さなメンテナンスが、10年後、20年後の「疲れにくい身体」「若々しい姿勢」という大きな配当を生みます。
マイナスの複利
逆に、「運動不足」や「悪い姿勢」といった「身体の負債」もまた、複利で膨らみます。「ちょっと肩が凝るな」「最近疲れが取れないな」。こうした小さな不調を「まだ大丈夫」と放置すること。それは、高金利の借金を放置するのと同じです。
ある日突然、ギックリ腰や四十肩、あるいはもっと大きな病気として、膨れ上がった借金の返済を迫られる日が来てしまいます。身体の資本が大きく取り崩されて(=健康を損なって)しまってからでは、元に戻すのは容易ではありません。だからこそ、身体資産がまだあるうちに、少しでも早く「運用」を始めることが重要なのです。
「大人のための体育と家庭科」を必修科目に
では、具体的にどう身体を「運用」すればいいのでしょうか?
そこで提案したいキーワードが、「大人のための体育と家庭科」です。
私たちは学生時代、大学入試や就職のために理系・文系科目を必死に勉強してきました。社会に出れば、今度は生活を守るために「金融資産」の増やし方を学び始めます。
しかし、ひとつの「生き物」として生きていく上で本当に大切な、「人間らしい身体の動かし方(体育)」や「健やかに暮らすための食事の摂り方(家庭科)」についてはどうでしょうか。それらが置き去りになったまま、大人になってから体系的に学ぶ機会はほとんどありません。
本来、これらは一生涯、「自分」という乗り物を操縦し続けるための「取り扱い説明書(リテラシー)」であるはずです。
- 自分の身体の現状(資産状況)を正しく把握する
- 必要なメンテナンス(投資)を行う
- 生涯にわたって健やかに生きるための知識を身につける
金融資産の運用計画を立てるように、身体資産の運用計画も立ててみる。それが、人生100年時代を豊かに生きるための、最も確実な投資となるはずです。
そして身体のリテラシーを高めるのに、年齢制限はありません。何歳から始めても、身体は正直に変わっていきます。一番のリスクは、「明日でいいや」と先送りにすること。
今日が、これからの人生で一番若い日なのです。
明日より、今日。 未来の自分のために、今この瞬間から「身体への投資」を始めてみませんか。
結局のところ、最後の瞬間まであなたの人生に付き添ってくれるパートナーは、お金ではなく、あなた自身の「身体」なのですから。











