「満腹」なのに、なぜか満たされない
お腹は膨れているのに「なんとなく物足りない」と感じることがあります。
これは意志の弱さではなく、“満腹感”と“満足感”が別物だからです。
- 満腹感 … 胃の容量が物理的に満たされた状態
- 満足感 … 体が「必要なものが入った」と判断している状態
たとえば、白いパンと甘いラテだけで一時的にお腹が膨れても、タンパク質や食物繊維が不足していれば、体は「必要な材料がまだ入ってきていない」と判断し、すぐに別の食べ物を求めます。
つまり、“お腹を満たす”と“体が納得する”にはズレがあるということです。
昔の暮らしには「満足感」がセットだった
狩猟採集時代、食事は自然の食材そのものが中心でした。
肉には脂もタンパク質もあり、木の実には脂肪と繊維があり、発酵や熟成を経た食品も珍しくありませんでした。
それらは 「カロリー+必要な栄養素」 がひとまとまりになっており、食べると自然と満足感が得られる構造になっていました。
一方、現代の加工食品は、
- 食べやすくするために食物繊維や苦味成分が取り除かれる
- 糖や脂だけが強調される
- 味の刺激が強く、本能的な満足感が一時的にかき消される
このため、満腹になるのに“物足りなさ”が残るという現象が起きやすくなります。
「満足感」をつくるには、何を足すかが先
ここでもやはり “足し算の発想” が役立ちます。
満腹を目指すのではなく、体が納得する材料を小さく積み上げる
たとえば…
- タンパク質を最初にひとかけら入れる(卵・魚・肉・豆)
- 繊維質のあるものを“ひと口だけ”先に食べる
- 味噌汁やスープを最初に口にする
すると、不思議ですが、その後の食事の食べ方とスピード、満足感の出方が自然と変わります。
満腹をゴールにしなくても、途中で「もういいかな」という感覚が出てくる——これが「満足感が働きはじめた合図」です。
「もう充分かも」と感じられる食べ方へ
満足感は、意志や我慢によって生まれるものではありません。
“足りなかった栄養が少しずつ補われることで、体が自然と落ち着きを取り戻す”
という、とても静かなプロセスです。
満腹感ではなく、“納得感”“落ち着き”といった感覚を食事のゴールにしてみる。
それだけで、食べ方の質はじわりと変わっていきます。



















