地べた時間の消失と、股関節のかたさ
椅子に座ることが当たり前になってから、私たちは“地べた”で過ごす時間をほとんど失いました。昔は、あぐら・正座・横すわり・しゃがみ込み——床に近い姿勢が日常の中に自然に混ざっていました。
この小さな環境の変化が、股関節の動きやすさにじわじわ影響しています。
なぜズレが起きるの?
狩猟採集の暮らしでは、座る・立つ・しゃがむ・また立つ——と、姿勢の移り変わりがこまめ。股関節(脚の付け根)は、曲げる・伸ばす・開く・ねじる、と多方向に少しずつ繰り返し使われていました。
一方で現代は「同じ角度で長時間」。昔と比べて生活の形が変わったことによる体と環境のミスマッチの中で、股関節の動きにはバリエーションがなくなってしまっております。
椅子で骨盤が後ろへ傾きやすく、太ももの前側・付け根の筋が張り、反対にお尻(股関節を安定させる筋)が働きにくくなりがちです。
体ではなにが起きる?
- 前ももの張りやすさ/腰の重だるさ
- 深くしゃがみにくい、足が前に出にくい
- 歩幅が狭くなり、疲れやすい
- スクワットや前屈で“つっかえる”感覚
ここで気をつけたいのは、股関節が単に柔らかければ良いということではありません。
大事なのは生活の中で“動かせる範囲が自然に戻る”こと。無理なストレッチより、日常の中で股関節に“ちょこちょこ動く機会”を取り戻していく方が安全で続きます。
今日からできる「30秒×3」の運動
① しゃがみ深呼吸(30秒)
- かかとを床につけた浅いしゃがみでOK。
- 背中を丸めすぎず、息を長めに吐く→鼻から吸う。
- かかとが浮く人は、厚い本や段差にかかとを乗せて。
② あぐら・骨盤ゆらし(30秒)
- あぐらで座り、骨盤を前後に小さくゆらす。
- 付け根の詰まりが減り、腰の反りすぎをリセット。
③ ひざ立ちヒップヒンジ(30秒)
- ひざ立ちで骨盤を軽く後ろへ、お尻をやさしく緩める→もとの姿勢を繰り返す。
- もも周りだけでなく、お尻も働くスイッチを作る。
コツ:「痛気持ちいい」手前で止める。 呼吸を止めない。回数より“毎日ちょっと”が正解。
進捗は数字よりも生活の軽さで見るのがおすすめです。
- 椅子から立つ一歩目がスッと出る
- 階段の上りで前ももの張りを感じにくい
- 靴下がはきやすい/床からの立ち上がりがラク
この3つのうち、どれか1つでも変化があれば、股関節の“自然な動きの範囲”は確実に戻りはじめています。


















