「運動連鎖」という言葉のちょっとした誤解
こんにちは!今回はややマニアックなお話です。
あなたは「運動連鎖(うんどうれんさ)」という言葉を聞いたことはありますか?
運動やリハビリの分野でよく使われる言葉で、「体は一つのつながりとして動いている」という考え方を表します。
たとえば、ボールを投げるとき。
指先だけでなく、足、腰、背中、肩――全身が順番に連動しながら力を伝えていますよね。
この「体のつながり」を説明するのが、まさに「運動連鎖」です。
ただ、この言葉を聞くと、まるで私たちの体が決まった“お手本パターン”に従って自動的に動いているような印象を受けるかもしれません。
しかし実際には、「運動連鎖」という考え方はかなり大づかみなものであり、私たちの動きを単純化しすぎてしまうこともあるのです。
私たちの動きは、みんな「バラバラ」で特別
私たちの体は一人ひとり違います。背の高さ、骨の太さ、筋肉の付き方、関節の柔らかさ、昔のケガ。すべてが違います。
だからこそ、同じ「歩く」という動き一つをとっても、実は細かい部分を見れば、一人として同じ動きをしている人はいません。私たちは、自分の体の形や、これまでの経験を活かして、無意識のうちに「自分だけの動き方」を作り出しています。
つまり、「運動連鎖」というものがもしあるとしても、それは人の数だけ全く違う形になっているはずなのです。
ラベルを貼ることの「もったいなさ」
スポーツやトレーニングの現場では、
「あなたはこういうタイプですね」
「あなたの動きは○○連鎖に当てはまります」
といったように、動きにラベルを貼られることがあります。
こうした分類は、指導者にとっては便利です。理解を早め、指導のポイントを整理できます。
しかしその一方で、本来とても個性的で豊かなはずのあなたの動きを、たった一つの言葉でみんな同じにしてしまう「もったいなさ」もあります。
あなたの体が持つ可能性や、あなただけの運動の工夫が、「運動連鎖」という枠の中に閉じ込められてしまうことがあるのです。
子どもから学ぶ「動きの楽しさ」

私には1歳になる子どもがいます。
その成長を見ていると、このことがよくわかります。
子どもたちは、「正しい歩き方」など教わらなくても、何度も転び、よじ登りながら、自分の体を使って試行錯誤を繰り返します。
彼らにとって大切なのは、「お手本に沿うこと」ではありません。
大切なのは、自分の体がどんな動きをできるのかを発見し、まだ持っていない動きを広げようとすること。
そして、その発見と挑戦そのものを楽しむことなのです。
あなたの「動き」を大切にしよう
身体運動において本質的に大切なのは、
決まった枠に収まることではなく、自分の体の可能性を感じ、広げていくことではないでしょうか。
「運動連鎖」という言葉は、体のつながりを理解するうえで役立つヒントになります。
しかし、それがあなたの「動きの個性」を否定したり、「正しい動き」という名の枠に閉じ込めたりするものではありません。
あなたの体は世界にひとつだけ。
あなたの動きは、誰とも違うあなた自身の個性です。
分析のためのラベルではなく、あなた自身の感覚を大切にして、運動を楽しんでいきましょう。



















