前回のコラムでは、「私たちの体は狩猟採集の暮らしの中で形づくられてきたのに、現代の環境は一気に変わってしまった」という話をしました。そのギャップは食事にもはっきり現れています。
いまはいつでも食べ物が手に入る時代ですが、“手に入りやすいもの”と“体が必要としているもの”は必ずしも一致していないというのがポイントです。
昔の人は、野菜や木の実、魚、動物の肉などを自然の流れの中で摂っていました。そこにはタンパク質や食物繊維、発酵に近い食品など、現代では意識しないと不足しやすいものが自然と含まれていました。
一方で今は、コンビニやスーパーで手軽にカロリーや糖質、加工油脂は摂れるものの、その裏で腸内細菌のエサになる繊維や、体の調整役を担うミネラル・発酵食品が不足しやすい構造になっています。
食事の改善は“引き算”ではなく“足し算”から
食習慣を整えようとすると、「何をやめるべきか」に目が行きがちですが、本来の体の仕組みを考えるなら、その前に “不足しているものを足す” ほうが自然です。
不足していた栄養が少しずつ補われると、甘いものや脂っこいものへの欲求がわずかに落ち着いていくことがあります。
大きな変化ではありませんが、「なんとなく食べ過ぎてしまう」状態が、少しずつ穏やかになっていくイメージです。
たとえば、こんな小さな足し算から
| よくある現代の食習慣 | 体への負担を減らす「足し算」 |
|---|---|
| 朝はコーヒーだけで済ませる | 味噌汁やスープを1杯加える(水分・ミネラル・発酵) |
| 昼食が炭水化物中心 | ゆで卵・豆・魚の缶詰をプラス(タンパク質) |
| 夜にお腹が空きやすい | 繊維のある1品を先に食べる習慣をつける(腸を落ち着かせる) |
これだけでも、血糖値の上下や食後の重だるさが少し穏やかになる感覚があります。
無理に「やめよう」とせず、体に必要なものを優先的に入れていくという方向への切り替えです。
「昔の体に、今の暮らしを合わせていく」という視点
原始的な暮らしを再現する必要はありません。ただ、体の設計思想が昔のままだと仮定するなら、その前提に寄り添った小さな工夫を生活に混ぜていくだけでも、日々の感覚は少しずつ整いやすくなる——これは多くの人にとって現実的なアプローチになるはずです。
次回はさらに「現代の食生活で大切なのは“減らす”より“整える”こと」 というテーマで掘り下げていこうと思います!




















