人間の体は「昔の暮らし」仕様のまま?
私たち人間は、長い長い時間を狩猟採集の生活スタイルで過ごしてきました。その期間は実に260万年前から1万年前まで。ざっくり言えば、ほとんどの世代が自然の中で体を動かし、限られた資源の中で暮らしてきたわけです。
一方で、農耕や文明、そして現代の生活が始まったのは、ごく最近のこと。便利になったのは間違いありませんが、私たちの体や脳はその変化のスピードに十分ついてこれていない、というのが大きなポイントです。
「原始的な生活を完全に真似しよう」という話ではありません。現代の医療や技術の恩恵は間違いなく素晴らしい。ただ、体の仕様が“昔のまま”なら、その前提に寄り添った暮らし方を少しだけ意識したほうが、健康には理にかなっているよね、という視点です。
現代の生活とのズレはどこにあるのか?
体と環境のミスマッチは、大きく分けて次の3つ。
- 多すぎるもの:カロリー、糖質、加工油脂、塩分など
- 少なすぎるもの:タンパク質、食物繊維、運動、睡眠、自然との接触など
- 新しすぎるもの:食品添加物、人工甘味料、ブルーライトなど
これらのズレが積み重なることで、肥満や糖尿病、慢性疲労、肌トラブル、メンタルの不調といった「現代型の不調」につながっていると考えられています。
実際、今も狩猟採集に近い暮らしをしている人々の間では、こうした生活習慣病がほとんど見られないという報告もあります。
「昔の人は寿命が短かったから参考にならない」は本当?
「そうは言っても、昔の人は寿命が短かったでしょ?」という疑問はよく出ます。
確かに平均寿命だけをみると30歳ほどと言われていますが、その数字を押し下げているのは主に以下の2つ。
- 乳幼児の死亡率が高かった
- 感染症や怪我に対する医療手段がなかった
これらを除いて計算し直すと、健康に生きた人たちの寿命はおよそ70歳前後。現代のような延命治療はなくても、亡くなる直前まで元気に動けていたケースが多かったと言われています。
つまり現代は「長く生きられるようにはなったけれど、健康に生きられているかは別の話」という現実があるわけです。
目指すのは「いいとこ取り」の暮らし
大切なのは懐古主義でもミニマリズムでもなく、ただ一点。
体の進化に沿った生活要素を、現代の生活にうまく組み込むこと。
便利なものは活かしつつ、人間の体が本来喜ぶ行動(体を動かす、自然光を浴びる、ちゃんと眠る、余計なものを摂りすぎない…など)を少しずつ取り戻していく。その視点が、これからの健康づくりの軸になるはずです。
次のコラムでは、この「上手な取り入れ方」について、具体的なヒントを紹介していきます!




















